I like it not love



俺は今、めちゃくちゃ好きな人が居ります。

その人は俺と同じ男で、部活の先輩で、がさつくて、荒っぽくて、何より好きな人がいます…しかも男、それが俺やったらええのに、て何度も夢に見てまうぐらいお似合い…、お似合い?なんかは解からんけど、俺なんか不釣合いやろなて、その人ら見て思うんです。

せやから俺はこないして日々、先輩の私物を持ち出してオカズにしたりしとる訳で。
さて、ここでひとつ今有り得へん状況が目の前で起きてしもてるんやけどどないしたらええやろか、て俺の頭は何時もより多めにフル回転。

その好きな人に、ひそりと思うがままにしとった行動がバレてしまいました。
俺めっちゃピンチ、ほんまにどないしよこれ。


「…何しとんねんお前」


俺の思う人、ユウジ先輩は二人っきりの部室で数分の沈黙を保ったままじっと俺の行動を見てはいつもより低い声でその沈黙を破って俺を見下ろしとった。
こないな所見られたら何も誤魔化しきかへん、何せ俺は今、自分の一物を片手にしっかり握ってもう片手には目の前に居る人のジャージを持っている訳で。

冷めた視線が降り注いで、ええ所まで育っていた俺の一物は一気に萎えてしもて、その手を今どうしようかと泳がせとる、ああ、もうほんま…よりによってこの人には見られた無かった。
こないなんせんでもいっそ好きやて言うてもた方が楽なんやろ、こないなんして自分で楽やて思わせとって、いざこうなったらなんか何も考えてへんくて空間が、空気がほんまに痛い。


「や、…これはちゃうくてあの…、う…」


どない頭フル回転しても弁解なんか出来る訳無い、ロッカーの前に座り込んで居る俺の目の前に先輩がしゃがみ込んでじっと様子を伺っとった、ほんま止めて、この空間ごとちゃう空間に移動とかせえへんやろかこれ。

「あーあ…しょうがない奴っちゃな、別にお前がナニしようがええけど」

さり気なくジャージで下股をどうにかズボンに直し、俯いてどう弁解しようか考えとったら俺の前に居た先輩は呆れたように言うと直ぐに立ち上がって自分のロッカーを開けてシャツを脱ぎながらつつじとりとめっちゃ俺の方を見て息を吐いた、 そんな仕草を見てるだけでさっき萎えた自身がまた反応してしまう、先輩の動作一つ一つ視界に入るとこれであってあれもこれもバレとったらきっとキモいとか思われるんがオチや。
ちゅーかやっぱり観察眼は半端やないんやなって改めて思ったんやけど、この人に付けとってバレてへんとか思とった俺はほんまにアホと言うか寧ろ…泣きたい。

「あれ…ジャージあらへん、忘れて来たんやろか」

「先輩のジャージやったらこれっすわ」

ロッカーに身を突っ込んで中を覗き込む先輩に…その、さっきオカズにして自分の膝に掛けとったジャージを掴み先輩に差し出した。そのジャージを見る度に先輩の頬がヒクリと歪んだのが普通に解かった、そらそうやろ服が勝手に俺の手元に来る訳あらへん。

「は?状況がイマイチ理解出来ん、色々聞きたいんやけど面倒いわ。っ…何やこれ汚れとるやんアホ、俺のジャージで何しとってん」

「あ…、すんません掛かとったん気が付かんくて、ほなら俺の使うてください洗濯して返しますわ」

最近こうやって堂々とジャージ交換とか美味しい事をさり気にやっとる俺も俺やと思う。

それもこれもこの人が好きやから、の行動やって、前回の謙也さんのアドバイス?も虚しくせやったら本人に言うたらええのに俺は何を勘違いしたのか先輩の行く先を尾行しとったりこうやって私物をオカズにしとるんでちょっと満足やったんや。
どないか近くに感じられとったら満足やった。俺のジャージを受け取り自分のジャージに袖を通す先輩を見たら何かほんまに胸が裂けそうになっとった。

「寒いんやったら別に使うてええけど汚したらアカンやろが、ほんでこないな所でシてんのもどないか思うんやけどな、光て見られて興奮するタイプなん?」

(寧ろ先輩見とったら興奮してまうわ)とかな事は絶対に口が裂けても言えへん。ただ単に自慰しとっただけやと思われとるんやったらそれはそれで助かったんやけど、観察眼半端無い癖にこういう所は鈍いんやろかてまた新たな一面を知って嬉しなった。

何でこんな感じに先輩を好きになってしまったのかと言えば日々の積み重ねであって、最初は本当にただ先輩として接していた筈やった、俺がレギュラーになると自然に3年のレギュラーと接する時間も多くなってきた訳で、そないな中でふとした会話だったり、ちょっとした気遣いだったりが中々こう 目が離せん存在になってしまったという訳で。

決定的なんは音楽の趣味が同じやったんが高じたんちゃうかなて、CDを貸し借りしとって他愛無い会話をする時に何かこの人と居ったらめっちゃ安心するて思うたんが切欠やないかなて。
ほんで小春先輩と何やかんやしとるユウジ先輩見とるとひょっとしたらて思うやん、こないなんちょい卑怯かもしれんけど可能性あるんちゃうやろかて期待してまうやん。
せやけど偶に話せたらほんまにラッキーなぐらいやって、先輩は俺の事具通にただの後輩やろうし、それ以上でもそれ以下でもあらへんのはよう解かっとる、のに俺はそれだけやったら物足りんなってコソコソ自己満足で先輩の写真を隠し撮りしたり帰り家まで付いて行ったり、たまにこないしてオカズに抜いたり。 まどろっこしい追っ掛けなんかせんとちゃんと言うべきなんやろか…。


「あの、ユウジ先輩…」

俺は床に座ったまま、先輩はすっかり着替えを終え時間を持て余してしまったのか椅子に座り欠伸をひとつ。俺の行為については最初無茶苦茶蔑んだ目で見とったけど俺らの年頃やったらようある事やろとか思うたんかそれ以上突っ込まれる事も無い、寧ろ気持ちを伝えるんやったら今しかあらへんのとちゃうか そんな事を思ったら居てもたっても居られんくなって俺から口を開いた。

「んー、何や?」


「俺の事キモいて思いました?」

「どうやろか、最近光ちょい上の空ちゃうかなて思とるぐらいや、何考えとんのかよう解からんわ」

敢て突っ込まれなかった事が気になって仕方なかった、それやったら俺から聞いたろ、ほんで嫌われたら嫌われたでそれこそ仕方が無い事であって。

「俺も自分でよう解からんかったんです、せやけど一つ解かった事がありまして…」

先輩にしたら触らぬ神に祟りなし、と言う所やろか、いや…俺神とちゃうけど。見てみぬフリっちゅーんが一番解り易いんかなこれは。
それに俺の事どない思うとるんかが気になって仕方なかった、嫌われたらほんまにそれでもええとかなヤケクソやないけどそんな覚悟もあって。

「さっきも先輩のこれで抜いとったんです」
「光、それネタやったとしても面白ないで」

確かにこんなの異常やと思う、それに自分のジャージで抜いとったやなんて聞いて嬉しい事やない、けどもう見られてもたんやったら隠しとっても余計気持ち悪い奴とか思われるままも嫌や。
一番近い存在になりたいだけやのになんでこないにひた隠して想わなアカンのやろ、それはそれで楽しいし遠めから先輩見とると何か満たされとる。

先輩やったらきっと解かってくれるて思うたんもあるし…、解からんかったとしてもそれは当たり前の事やし。

「もう見とるだけやったら我慢できんでしゃぁないっすわ…、先輩の事思うただけでココもこないなってもて…」

あー…とうとう言うてもた、キモいんやったらすぱっと切ってくれたらええとか覚悟しとったのに急に胸ん中が痛い、覚悟しとったとは言え嫌われたらほんまにもう俺どないしてええか解からん。
ほんまはこないな形で言いた無かった、見られたからて言うん情けないわ、俺のアホ。


「知っとった、で」


もう頭がぐちゃぐちゃになりそうで喉から何か出てきそうな感じがして顔を伏せて膝に掛けとった先輩のジャージを強く握ったら先輩は俺から目を反らして後頭部を片手で描きながら小さく呟いた。

「後付いて来とったんもずっと見とったんも知っとる」

これでほんまに終わったんやな、て思うたら何や気が抜けてしもた、先輩の言葉は、ああやっぱり無理やろなて勝手に頭ん中で連想させてしまう、そしたら多分泣いてまう。
そやけどそんなん見せたら女々しい事この上あらへん、涙とかは出て来えへんかったんが幸いや。
「それやったら迷惑や、とかキモいとかちゃんと言うてくれたらもう付き纏いませんて」
知っとる、なんか言われたら今までの行動が全部恥ずかしくなってきて、自分の所為やないて思わなどないもならん、せやから全部先輩の所為にしようとしとる俺って最悪や。
それを言うて押し黙った俺に先輩は椅子から退き、俺の前にしゃがんできたから咄嗟に目を閉じて顔を伏せとったのに目の前に居るんやなって気配はしっかり捉えとって。このまま無いわ、そら無いわって完全否定したらええのに何でこっちくんねん、てもう俺の頭ん中はパニック状態で体が硬直してもた。


「アホやなー…、ほんまアホや」

その言葉に固く閉じた瞼をそろりと上げた、視界の全部が先輩で埋まってもた、もう力が抜けたり入ったりしてどないしてええんか解からん、視界の前の先輩は俺を見て肩を揺らして笑うとる。

「それ謙也さんにも言われましたわ」

どないしたらええか解からんなってしもた俺は多分めっちゃ情け無い顔をしとったんやと思う、顔を反らして居た堪れなくなって口を尖らせて拗ねて誤魔化した、俺が女やったらそないなんされても大歓迎やったんやろかとかふと考えてしもた。

「何でそないな事しとった?って…聞くまでもあらへんか」

「やって…どない伝えようもあらへんかって…、俺男やし、無理やて」

それでもこの人はちょっとちゃう、…と思うから期待してもた。

「あんなぁ…そないなん関係ないやろ、光ん事は嫌いやないで、よう解からんから観察しがいあって面白いねん」


「せやけど、小春先輩が好きなんちゃうんですかアンタ」

今までの自分の行動を人の所為にして必死に正当化しようとする。正当化してもまともな行動やないんは解かっとるけどそないせんと気持ちが落ち付かへんかった。

「無理やって解っとってストーカー紛いな事されとっても全然面白ないねん、解るやろ」

「せやけど嫌やて思う理由はあらへんで?好いてしてしもた事やろ?」


やっぱりこの人やったら解ってくれると思うとった、ほんまにアホやったんは俺やった、先輩は片手を伸ばし少し項垂れた俺の頭をくしゃりと掻き混ぜて笑う、その顔を見たら急に硬直していた体から本当に力が抜けてしもて、何度も頷いた。

「そらちょい何考えとるか解らんし、まさかなぁ、て思とったけどな、なんや…それやったら早い事言うてくれやて様子見しとったんや」

撫でていた手の動きが軽くお咎めと言うようにぽんと頭を叩く、それは本当に軽く置くだけのモンやったけど。そのお陰で今までひた隠しにしとった言葉をようやく告げれそうやと俺は先輩を見た。

「…ほなら、俺がユウジ先輩の事好いとっても嫌やて思わんのですか?」

「嫌やて思とったら気が付いた時点でお前ん事蹴飛ばしとるわ、あと半径4m内近づくなて言うな」
何で4mなんや、とか突っ込みそうになったけど黙って聞いとったら可笑しなってもて思わず俺も肩を竦めて噴出してもた。

「先輩めっちゃ意地悪いわ」

せやけどめっちゃ好き、その気持ちが益々膨らんでしもてどないしようもあらへんかった。

「なー、光…、もう焦って変な事せんとやな、ゆっくり近く居ったらええんちゃう?」

「先輩めっちゃいやらしいっすわ」

全然否定やない言葉に嬉しなっていつもの調子を取り戻した俺は先輩の顔を見とったら自然に頬が緩んだ。

「う、うっさいわ、お前があんまり思い詰めとるからどないかしたろって人が折角!」


「先輩めっちゃ好きっすわ」

調子が戻れば今まで言えんかった事をすんなり言うてしまう、さっきまで余裕そうに俺の頭に手を置いていた先輩が今度は焦っとったんが面白いなて。

「光めっちゃキモいわ、俺のジャージでちんこ擦るとかほんま有り得へん」

キモいて言う割りには当初に見た冷たい視線はまったく感じない。心の其処から嫌やて思われてへんのかなて思うたらそない言われても俺がショックを受ける事もあらへん。 この人はほんまに、そういう人なんや。

「俺の事嫌やないて言うたやないですかたった今」

「何やねん、お前なんか俺の帰り張って公園で待ち伏せしとったやろ!あと携帯写メ!バレバレやっ」

「ほんま好き、大好きやったんですずっと、好き過ぎて頭おかしなってもてそんなん覚えてへんしよう解りませんわ」

「俺は小春が好きやー、小春ん事考えたらお前の気持ち何や人事やないなて可笑しなるわ」

そこで小春先輩の事を出す先輩て…、とか思うたけどそれすらも愛しい思う、きっと照れ隠しなんやないかなて今の俺やったら結構前向きな考えやって、そこははいはい、とか言うて流せる。

「先輩らのキモいネタと同じにされたら嫌やわ」


へらず口のまま笑い合うとほんまにこの人が好きなんやなて胸が一杯になる、肝心な先輩から俺の事どない思うとるかはそないなんもうどうでもよかったんや、とりあえず俺の気持ちを解ってもらえただけで満足やった。
先輩は少し困ったように苦笑して俺から手を引き、俺の頬を摘んでまた笑い合うた。
伝わったからてまだ先輩の答えは聞いてへんからそれ以上になるかどうかはまだ先の事やろうけど、 今は俺が一杯好きやて、それが伝わっただけでどんだけ楽になった事か、 せやからこのままでも全然ええて思うた。




end