I do not understand it
きっかけとか考えてたらよう解らんなった、ほんまにどこがええんやろとか思いつつ先ユウジ先輩と小春先輩のダブルス、 その相手は他の3年の先輩らのダブルス、何も変わり栄えせんいつもの試合形式の練習しとるコートを俺は端でつっ立ったまま眺める。
こないして先輩らの試合を見るんも勉強や、て回りからは思われとるんやろか部活中にも関わらずぼんやりしとる俺を咎める先輩は居らんかった。
ちょっと前までは気にも掛けへんかったのに、最近の俺と言うとあの人から目が離れへん。
顔がええんやろか、とかも考えてみたけど多分それやったら大分前から気になる筈やろうて。
対戦しとる相手の先輩はモノマネをされて翻弄されとる、あぁ、本気出したらあの人ほんまに凄いんやなてのめり込むようにして姿を追い掛けて夢中に見とった
(何時も本気やないんやろかて疑うてまうぐらいふざけとるから)
そんな凄さも相変わらずお笑いテニスや言うてふざけたコンビネーションを繰り広げられとって…それが何で目が離されへんかて言うたら
気にもしてへんかったのに、いざ見てしもたら見せられんのは試合しとる時のあの人は別人のようであっていつのもそれとはまた違う感じもある…んやけど、その所為やろかて。
(ほんまによう解らん…)
見れば見る程首を傾げてぼんやりとその試合を眺めてた、何時の間にか立ってた筈なのに無意識にそこに座り込んどるんも自分で気が付いてへんかった。
小春先輩と抱き合うとる、それ顔近い近い…どこまでネタやねん、どこまでやんねん、どっからどこまでやねん。
ポイント取る度に見せつけられる抱擁には何故かもううんざりやっちゅーのに、もっと周りはやれだの本気かいなて思う。
そんで、それと同時に何か胸の中がムカムカして目を反らした、のにまた見てしもて眉を寄せて無意識に口許に手を覆った。
(何か目が離せんて言うか、何なんやろな…何で苛々しとるんやろ、あ、めっちゃ楽しそう…)
目の前の俺を余所に楽しそうに小春先輩の肩に腕を回して笑うとるユウジ先輩の顔が頭に焼きついた。
「…ん、財前!」
どっかで何か呼ばれとるような気もしたけど多分空耳やろう、て…、相変わらず視線の先はずっとユウジ先輩を追い掛けとった、それがすぐ傍やとも気が付かんかった。
「どないしてん…?しっかりしいや、これから俺ら出番やで」
俺の視線が急に暗くなったり明るくなったり、多分目の前で手を振られてるんや、と暫くしてから気が付いた。
相変わらず俺はぼんやりしとるのにその動きは段々と激しくなって目の前で手を叩かれ肩を竦めて更に我に帰る、そして視界を塞ぐ謙也さん。
手が離れればトントンと自分のラケットで肩を叩きながら謙也さんが微動だにしない俺を見て息を吐いてるのが解った、あ…やばい。と俺の頭の中で呟いて慌てて謙也さんを見る。
「ーあ、何か用っすか…俺今めっちゃ忙しいんで…」
「どこがやねん、座ってボケっとしとる癖にアホか、大丈夫か?何や様子おかしいで自分」
塞がれてしまえばこの目はあの人を写せへん、慌てた先、視線を合わせると目の前で腰を屈ませて目を細めながら熱でもあるんじゃないかと掌を俺の翳しつつ謙也さんは更に覗き込んで不思議そうな顔をしとる、
ほんまにこの人空気読めへんわ…、せやけどこの人はこの人なりにの行動やって、パートナーやしこないでもせんと俺が動かんかって、
迷惑掛けとるんやろかな、て渋々ユウジ先輩の姿から視線を離し試合を見んようにした。
多分、視界から一瞬たりとも姿を消した無いんやて、さっき目に焼きついた笑顔が頭から離れへんまままるで酸素失うたように一寸俺の視線が泳いだ。
「別に…どないも無いっすわ」
立ち上がって未だ俺の様子に首を傾げとる謙也さんにこないな事言うつもりあらへんかったのに、素っ気無い返事をした自分に少し後悔した。
それならそれで、と肩を竦めて軽く頭に手を載せられるがこれもあの人やったらええのになとか思うてしまうあたりもうどうかしとるんやろうか。
ただ見とるだけやのに頭の中の焼きついた光景っちゅーんは何度も何度も振り払おうとしたのに一向に離れんくて。
意識せんかったら無事に自分の成すべき事ぐらいはやり遂げられる、ただそれに関してどうこう思う事も無くやり過ごすだけやけど。
ほんま変なのは自分やって事ぐらいはもよう解っとった。この変な感じはハッキリしたもんや無い、それを他人に、ましてやあの人には悟られた無い、敢て言われるとまるで俺がもう全身でおかしいと指摘されとる気がして腹が立つ。
「今日ほんまどないしてん、まぁ調子悪いんやったら無理せんとちゃんと体調管理せなアカンで?」
部活が終わる着替えとる横で背中を軽く叩かれる、今日だけの事かと内心ホッとしとる、普段からそないに張り切っとる性格やないんが高じたのか…バレんでよかったとか安心しつつ
そない言わせて心配させてしもとる現状は俺にとったらほんまに情け無いというべきか、らしさなんか欠片も無いんやろなて苦笑いするしかあらへん。
「謙也さんは俺の事構いすぎやろ、こないなんいつもの事やって…」
「何他人行儀な事言うとんねん、構うんは当たり前やっちゅー話しや、それにいつもと大分ちゃうわ、心配なるんは当然やろ」
解っているようであまり深くを探ろうとせえへんこの人は空気読めへんのか読み過ぎて寧ろ解ってしもとるんか察してるんやろかとか誤魔化しも下手な事は言われへん。
「そら…こないなんに手間掛けさせてもてすんません…」
普段ならこない謝るなんかせえへん言葉に謙也さんは目を丸めた。
これ以上は悟られた無い、てまたらしからぬ事をまた口走ってもた。
…ああ、俺そないに変やろか。
暫く眉を寄せてまた俺の顔をじっと見る謙也さんの目を真っ直ぐに見返せんかった。
態度に出てしまえば当然周りからも不自然に思われるだろう、と、一旦は冷静になったりもしたけどたまに頭の隅でちら付いたあの人の顔は離れんくて。 見れば見る程色んな表情を見せられて、その度に勝手に自分のテンションが上がったり下がったりしとって、
多分見てるだけで自分も充実しとるような気がした、一喜一憂とはこの事やって。
ほんまに楽しそうにしとるとこっちまで楽しい気分になって段々それだけなのが物足りなくなったのは言うまでもない。
目が離せんくなってからはちょっとでもあの人の事見たい、そんな一心やったと思う。その表情俺に向けて貰うたらどんだけええやろか、て…。
いつも先輩らが一心同体やらとかで肌身離れず気色悪い乳繰り合いを見せ付けられとって、その度に苛々が増す。
その度に言うんは決まってキモいという言葉であって、これは何というかその空間に入られへん悔しさと言うか、嫉妬しとるんやろかてそろそろ気が付いた。
小春先輩言うんは侮れへんくて、俺があまり面白くない反応をすればするほど絡んで来よる、一番近いんは俺やのうてこの人なんやて言うのは解っとるから余計悔しなった。
この人が俺に絡むと大概あの人の矛先は当然やけど俺やない、ほんまに面白ない。
「いやあ、まぁ…あらあら…どないしよ、光ちゃんが恋しとるわぁ…可愛ーっ…」
「ちょ…ほんまキモいから止めて、有り得へんから」
うっかり顔に出てしもた時にそない絡まれて最初に気が付いたんは小春先輩やと直ぐに解った。
何やったらあたしが仲取り持ってあげるわよー、だのきゃいきゃい突付いてくるから鬱陶しいことこの上ない。 天才とか言う前にこの人の乙女指数が半端無い所為やろかて、けったいなカマキャラにめちゃくちゃ焦る。
悪い人や無いけどよりによって、一番近い人やから余計に。
(いや、これは俺がキモい、寧ろ俺がキモい…どないしたいん俺…)
謙也さんや一番恋敵やろ(と思う)小春先輩らに解られて自分ではハッキリせえへん、確か俺はあの人を見ると頬が緩んどったんやと思う。
他に解って自分に解らんて理解出来んまま焼きついた顔が頭にぐるぐるしたままたまたま一番乗りした部室の自分のロッカーに額を当てて唸るしか出来んかった、物足りんなった俺の頭ん中はちょっと魔が差したんやろか
ちらりと少し離れたあの人のロッカーが目に映るとその場で着替えしとる姿を思い出してもたらもう止まらんかった、手を掛けてそこが簡単に開くとごくりと生唾を飲んだ、そんで無意識に扉を開く手が震える。
どないしたいんやろ、包まれたいんやろか、見て欲しいんやろか、ちょっとでも触れたいんやろか、好きなんやろか、て頭ん中がぐるぐるしとる。
思えばこの動作から俺の思考が更におかしい事になってしもて、気が付いたらロッカーを開けてしもとった、こんな中でどうなる話しでもないが俺にしてみればそこはあの人で一杯な訳であって…。
アカン、とかそんな事すら思わん内に左手は既にハンガーに吊るされとるジャージが握られとってそれを引き寄せたら頭に焼き付いて顔が此方に向いてくれとる気がした。
その顔が俺の方に向いとって、ひかる、て口が動く、声は聞こえへんけど何度も呼ばれとる、手に引き寄せたジャージからは嗅ぎ慣れない匂いがした。
(あぁ、好き、めっちゃ好き)
やってしもたらアカン事をとうとうやってしもて、その匂いがあの笑顔と共に更に俺をおかしさせたんかも知れん。
包まれたくて、本物の暖かさは無いけど今の俺にはこれだけで十分やった。
誰も居らん部室でジャージを嗅いどる俺は滑稽やった事やろう。
To be continued